12 月 24 日
12月24日。 クリスマス・イブ。 そしてトニートニー・チョッパーの誕生日! 「うわぁー!?」 朝、チョッパーが外に出ると船はクリスマス模様に変わっていた。 蜜柑の樹にはたくさんの飾りが飾られ、キッチンの入り口にはリースが飾られ、所狭しと小さな電球が船の周りを囲んでいる。 23日の真夜中、チョッパー以外の仲間がチョッパーを起こさないように注意しながら飾り付けたのだった。 そしてチョッパーがキッチンにはいると、「お誕生日おめでとう!」みんなから祝いの言葉をかけられた。 「う、うれしくなんか、ないぞ!」 相変わらず顔はうれしそうなのに、反対の言葉を言う。そんなチョッパーをみんなが、うりうりと帽子を押さえつけられたり、頬をつねったりしてからかった。 みんながウキウキしている。 特別な日を祝おうと、夜を楽しみにしている。 しかし、こんな日だからこそ忙しい者もいた。 この船のコック、サンジだ。 クリスマス、チョッパーの誕生日、クソうめぇもんを作ろうと使命に燃えている。なんてたってこの船には底なしの胃袋を持ったルフィがいるのだ。普段の2倍・・・いや5倍は作らねばならない。 サンジは普段の何倍ものスピードで料理を作っていくが、横からのつまみ食いに何度目かの堪忍袋が切れ、ルフィを冬の海に蹴り落とした。 さすがにこれにはナミに注意されたが、このままではサンジの血管が切れてしまう。 そこでサンジの手伝いをしていたビビがルフィを止める役目をかって出た。 サンジとしては自分の近くにいてもらいたいが、このままでは料理が作れない・・・。 「くそぉ・・・誰のための料理だと思ってるんだ!!」 涙目のサンジは、恨めしそうに仕方なくビビをキッチンから解放した。 その後ビビといちゃつく時間を作るため、いっそう料理を作るスピードを上げるサンジだった。 それからビビは甲板に出るとルフィを正座させ、くどくどと説教モードに入る。カルーも訳が分からずルフィの横に座り、ビビの話を聞いている。 しかしじっとしているルフィではない。口を尖らせ、ゴムの手を伸ばし少しでもキッチンに近づこうとする。その手を踏んづけ、ビビの説教は続く。いつまでも・・・。キッチンの料理を諦め、蜜柑を取ろうとすると、通りすがりのナミの怒りのげんこつが入った。 あまりに言うことを聞かないルフィに、ビビまでもルフィを海に落としかけたが、それはナミに止められた。 辺りが暗くなってくると、ウソップがチョッパーにスイッチを渡した。 「つけてみろよ」 「? おう」 訳が分からず、手元のスイッチを押したとたん、船が光り輝いた。 「おおお!!」 びっくりして船の周り見渡す。無数の電球の光りが辺りを照らし幻想的に見える。海に映る光りはゆらゆら揺れ、とてもきれいだった。チョッパーは目を輝かせ、美しい光景に見入っている。その様子をウソップもうれしげに見ていた。 「うぉおおお!!」 ルフィが目を輝かせ、サンジの持ってきた大皿の料理を見つめる。朝からずーっとがまんにガマンを重ねた食欲に火が付く。 「さあ、食いやがれ!」 みんながグラスを持ち、 「チョッパー、誕生日おめでとう!メリークリスマス!」 グラスをあわせ、乾杯した。 大きなバースディケーキに15本のろうそくが立ててあり、そこには『チョッパー たんじょうび おめでとう』の文字が。そのことに感動してチョッパーがケーキを見ていると、ルフィの手が伸び、危うく一口でケーキを食べられそうな一幕もあったが、サンジandビビのダブルクロスカウンターにあい、ルフィは船の後ろまで吹き飛んだ。 「早くろうそくを」 サンジに言われ、急いでチョッパーがろうそくを吹き消そうとすると、ビビが止める。 「トニー君。ゆっくりでいいよ。ルフィさんは必ず止めるから」 「え?でも」 ビビは優しく笑った。しかしルフィの魔の手(?)はそこまで来てる。 「ろうそくを消す時、何か祈るとね、その願いは必ず叶うのよ。 だからゆっくりでいいよ」 そう言ったビビの顔は電飾の灯りの瞬きを受け、とても幻想的できれいだった。チョッパーはただビビに見惚れぼーっとしていると、いきなり上から重力がかかる。サンジがチョッパーの帽子をグリグリと押さえてけていた。 「グゲッ」 「さぁ、はやく消しやがれ」 「サンジさん!」 ビビが注意すると、サンジはふてくされたように「ビビちゃんに見惚れるなんて百万年はえぇ」とブツブツ言ってビビの隣に座り込んだ。 少しめり込んだ帽子を直し、チョッパーはケーキの前で一瞬 目を閉じ、ろうそくに向かって息を吹きかけた。 パチパチとナミとビビが小さな拍手を送った。 「ううう、うれしかないぞ!このやろう!」 やっぱりチョッパーは素直じゃない。 朝から準備したたくさんの料理は、ルフィの胃袋に全て消えてしまった。満足したのか今度はゾロとナミが飲んでいる酒にまで手を出す。するとゾロが別の瓶をルフィに渡した。 「飲んでみろ」 そう言われて一気飲みする。すると・・・・・急にまっ赤になりへにゃへにゃと、のびてしまった。 「ちょ、ちょっとルフィ。ゾロ!あんた、なに飲ましたのよ!」 慌ててナミがルフィの持つ酒瓶を見ると、それはアルコール度数90%のウォッカだった。 「きゃ!大丈夫?ルフィ!」 「・・・大丈夫だろう」 「てめぇが言うな!」 ガツンとナミのげんこつが炸裂する。水をルフィに飲まそうとすると 「・・・もう・・・食えねぇ〜」 ルフィは幸せそうに眠っていた。 「・・・・・」 ナミとしては納得できないものもあったが、『悪魔の実の能力者だし』『ゴム人間だし』『チョッパーもいるし』と自分を納得させた。大きな溜息をつき、ナミは酒を一気にあおった。 「・・・・・そうね」 気にしないことにした。 アルコールを飲まないチョッパーとビビとカルーは、ウソップのホラ話を夢中で聞いていた。 次々に話される話に引き込まれ、聞き手のチョッパーもビビも目を輝かせている。ちゃんとした聞き手がいるのはウソップもうれしいことで、どんどん話が大きくなっていった。 あら・・・? そういえばサンジの姿がない。まだキッチンで何かしてるのかと、ビビは席を立った。 「サンジさん・・・」 ゆっくりキッチンのドアを開けると、中は灯りがついておらずサンジは机に頭をのせ、眠っていた。 朝からのルフィとの攻防戦に、大量の料理の準備に疲れたのだろう。ビビはサンジの隣に腰を下ろした。月の光が受けてサンジの髪はとてもきれいだった。ビビはサンジの髪をそっと梳いてみた。さらさらと流れる髪にビビは笑みをもらす。 「・・・おつかれさま」 小さな声でねぎらいの言葉をかけた。 「どういたしまして」 「あら、起きてたんですか」 「ビビちゃんがここに来たから起きました」 そういうとビビと向き合った。 「ビビちゃん、手、出して」 少し照れたようにサンジが右手を差し出す。 「なんなんですか?」 ビビは訳が分からず、でも右手をサンジの手にのせた。差し出された右手を少々不満そうに見つめ、ビビの手の甲にキスを落とす。そしてビビの左手を取り、薬指に指輪をはめた。 「メリー・クリスマス」 少し照れたようにサンジは言った。 突然のことに、ビビは呆然と左手薬指を見つめる。銀のリングに小さな黄色い石が付いていた。 「・・・この色、サンジさんの髪の色みたい」 「そ。この指輪を見るたび、俺を思いだして」 ビビは指輪にそっと口づけた。 それは神聖な儀式のようで、ビビは月の光を受けて白い肌はより白く、蒼い髪は淡く輝やいている。 「俺にはキスしてくれないの?」 ビビに見惚れながらも口を尖らせサンジはつぶやいた。するとビビは頬を染め、ゆっくりと微笑んだ。 「ステキなサンタさんにキスのプレゼントを」 |
■MINI LOVE ROUTEのさきまきさんよりイラストを頂きました!キス一歩前ですよ。ありがとうございます!
02/12/23 ★ CULT BITTER / キル
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