… X'mas Gift … それは偶然だった。 立ち寄った島でログが溜まるまでの時間、各自散らばることになった。 サンジは大食い船長のために今日も大量の食料を、麗しの天才航海士と未来の剣豪とのために大量のアルコールを買い出しに街に出た。 本当なら横にはサンジのお姫様がいるはずだった・・・のだが、ビビはナミに先に連れ去られてしまったのだった。 溜息のひとつやふたつやみっつ、つきたいものだがそろそろ季節は冬本番。クリスマスを控えてる。プレゼントのことを考えると今日は別々に行動するのがいいかもしれない。 やっと第一段の食料を荷台に詰め込み、船に運んだ。後何回往復することになるやら・・・と思っていると、空からポツポツと雨が降り始めた。 濡れちゃかなわない、と近くの軒に雨宿りとなった。 「まいったな」 辺りは急に暗くなり、サンジは灰色の雲を見つめた。まだ買い物はあるし、このまま降り続くようなら覚悟を決めなければならない。 どこかで時間でもつぶせたら。お茶でもするか、出来ればきれいな女性と・・・と考えていると、雨宿りに入った軒は何かの店のようだった。窓からは薄暗く中がはっきりとは見えず、あやしそうな暗い雰囲気をかもし出していた。 「・・・暇つぶしにはうってつけ」 つぶやくとサンジは店のドアを押してみた。 中は薄暗く・・・ 「って電気ついてねぇじゃねぇか。おーい、誰かいませんかー?」 薄暗い店内をきょろきょろと見てみると、ガラスケースが見えた。何を売ってるのかと目を凝らそうとすると、辺りはいきなり明るくなった。 「なんじゃ。泥棒か?」 「泥棒はひどいんじゃねーの」 サンジはいつもの軽口で、出てきた年老いた男に話しかけた。明るくなった店内を見るとガラスケースに収められたものが輝いていた。 「ここって宝石店?」 「今日は休みじゃよ」 「あーそれで薄暗かったのか」 「で。あんたは客かい?」 「そーなるのかな。なんかいいモンある?」 どう見ても冷やかし、雨宿りにしか見えない、この島の人間ではないサンジに店主は溜息を付いた。が、ここで商売人。 「もうすぐクリスマスだが、彼女にプレゼントかい?色男の兄さん」 「そ、プレゼントに。青い髪のかわい子ちゃんなのよ」 そのまま惚け続けそうな様子に店主は少々引き気味になりながら、ガラスケースの宝石を出していく。 「ダイヤモンドなんてどうじゃ?ダイヤモンドを身に付ければ輝くような美と金運に恵まれ、愛に満ちた家庭を築くことが出来るという。決めるときはこれなんかどうじゃね」 ネックレスやブレスレット、イヤリングや指輪をサンジの前に出された。 「彼女の誕生日は?」 「へ?2月2日」 「誕生石はアメジストか。紫水晶じゃな」 「紫水晶か・・・きれいだな」 「アメジストはひそかに思っていた相手に自分の気持ちが伝わって恋が成就するといわれている宝石なんじゃ。そして心を安定させ、平和で落ち着いた生活を導いてくれるといわれとる。あんたみたいにフラフラしてそうならピッタリかもな」 「ひでぇな」 乙女おまじないのようなジュエリーのパワーの話を聞いてると笑ってしまうな気がしたが、恋するものとしては心のどこかで真剣に聞いていた。 「これなんかはあんたの髪の色じゃな」 そういって出されたのはトパーズだった。 「これは代表的な色は黄金色でインペリアルトパーズと呼ぶんじゃ。語源は紅海の真ん中にあったいつも霧に覆われていた幻の島トパゾス。「探す」という意味がありここからトパーズが採れたと言うらしい」 「へぇ・・・」 サンジは黄色い石のついた指輪を手に取った。 『探す』 追い求めている奇跡の海。 海に出、海賊になり、グランドラインにたどり着き、ここまで来た。サンジの人生はいつも何かを探している。オールブルーはまだ見つかっていないが、愛する人に出会えた。 ビビの薬指にサンジの髪の色と同じ石をのせた指輪。 独占欲丸出しだ。 自覚があるだけにサンジは苦笑した。 「これにするよ」 小さな箱はサンジの右ポケットの中に収まった。その分財布が軽くなったが。 サンジのポケットにあるのは小さな指輪と、ビビの喜んでくれるだろうかと思う幸せな気持ち。 いつの間に雨が止み、外は雪が降っていた。寒さに体を震わせる。 はやく帰らないと。 船にはサンジのあったかい料理を待つ仲間と、愛する人が待っている。体は寒さに震えながら、心はあったかく満たされている。 それは偶然だった? いや、これは必然。必要なこと。 クリスマスまで後あともう少し・・・・・。
MINI LOVE ROUTEのさきまきさんから「12月24日」のイメージで描いて頂きました!キス一歩前ですよ。へっぽこな文章から、ここまでよく描かれてうれしいともっ申し訳ないです。本当にありがとうございます。 イラストを頂き、勢いで「12月24日」の話の続き・・・というか指輪買う前の話を書いてみました。 トパーズ「語源は紅海の真ん中にあったいつも霧に覆われていた幻の島トパゾス。「探す」という意味がありここからトパーズが採れたと言う。しかし、この石は今で言うペリドットであった。」・・・ってアカンやん(笑)。トパーズ好きなんで、つい持ってきてしまった。 宝石に関することは 宝石・貴石→http://isweb19.infoseek.co.jp/art/s-works/ishi.html ジュエリーのパワー→ http://www.royalgrace.co.jp/home/gems/power/power.html から引用しました。 |
03/01/29
CULT BITTER ★ キル