23.『 マフラー 』



 ジリジリジリィ!
 朝からうるさい目覚ましが勢いよく鳴り出し、目が覚める。冬の朝は寒い。ちょー寒い!さむいさむいさむい!布団から出たくない!ああお布団はなんてぬくぬくなんだろ。幸せだなぁ僕は君を離さないぞ!とマジ思うのはこういう時だろうな・・・とぐずぐずしてたら、「英二!起きなさい!!」と威勢のいい声姉上様のお声がかかる。
「わぁった」
 一応返事はするんだけど、布団から出れない抜け出せない。君(ぬくぬく布団ちゃん(仮名))も俺と離れたくないんだね、わかるよわかる、俺も君と離れたくないよ、でもね出ないとね・・・
「エージ!!」
「はーい!」
 怒りの鉄拳が来たりするんだ。ちぇ。部活も引退し、今までのことを思うとそりゃもうゆっくりなんだけどね。急いで着替えて下に降りて鏡を見ると、あらまぁ今日も頭は爆発気味で、かっこいい菊丸くんになるために髪のセットは念入りにしなきゃ。

 朝ご飯はほっかほかご飯におみそ汁、具はじゃがいも北海道。あと昨日の残り物やらお総菜やら色々あって、人数が多いから豪勢だ。朝からこんなにたくさんあってしゃぁわせ。さむ〜い中朝食の準備、嗚呼お母様ありがとうございます。朝の幸せ第一段。
「いっただきます!」

 朝食を満喫して、テレビを見るとそろそろ時間だにゃ。今日も寒そうだから帽子、手袋、マフラー、あカイロカイロ!忘れ物ないか・・・カバンカバン!って俺なにしに学校行くんだよ!
「いってきまぁーす!」
 朝は慌ただしい。

 外は寒くて吐く息白くて体ふるえちゃうよ。だけど急がなきゃ。いつもの場所で不二が待ってる。いっつも時間通りに行くんだけど不二の方がいっつも先に来てて寒い中待っててくれてる。赤くなった頬がかわいいんだけど、そんなこと言ったら怒られそうだから言わないけど。いっつも思ってる。
 って到着!って不二いないよ!どしたの!?
 遅れるなんてめずらしい・・・て事故?!誘拐!?←かわいいから。ってオイ!風邪?熱?って昨日はそんことなかったぞ。電話でも『宿題わすれるな』ってかわいくないこと言ってたし・・・なんてこと思ってたら走ってくる不二発見!
「エージ」
「不二!」
 よかった。無事だったんだ!
「遅れるなんてめずらしー」
「はは、ごめんごめん」
「いいって。いつも待っててもらってますから」
 不二といっしょ。どこでもいっしょ。朝の幸せ第二段は不二だよな。朝から和む。不二って癒し系って思うのは惚れた弱みでしょうか?
「アレ、マフラーは?手袋は?帽子は?」
「急いでたから」
 不二も俺に劣らず寒がりさんで、帽子手袋マフラーは三種の神器(?)。それがないと見てるだけで寒そうにゃ。でもそれだけ急いで走って来てくれて。うれち!不二に抱きついた。寒いけどあったかい。
「ほい」
 そういって自分のマフラーを不二に渡す。ついでも帽子も手袋も。
「英二が寒いでしょう」
「不二が寒いのがヤなの。だからハイ!」
「いいって」
「だめ!」
 ここで譲り合い精神を出し合ってるだけで寒くなるんだけど。
 不二にマフラー巻き付けて、手をつないで駆け出す。結局手袋外して生手。さむーい。だけど不二と手、つないでるからいいや。
「エージ」
「ん?」
「ありがと」
「うん」
 不二の笑顔。俺もうれしくてニッコリ。
寒いのはヤだけど、こういう特典があるから冬はスキだよなぁと思うのであります。


03/01/29 ★ MAGIC CHANNEL / キル