* Special *







「今日も行くのか?」
 後ろを歩く王天君が聞く。そして太公望は答える。
「もちろん!!」

 伏羲になってからも、太公望は申公豹に会いに行った。なぜなら会いたかったから。
 初めは伏羲として会っていたが、王天君がいいかげんイヤになって抜け(太公望的にはオッケーだが)太公望だけが日夜申公豹の元に行くようになった。いやがられてもうとんじられても行く。行くったら行く!

「前から思ってたけど、根性あるな・・・根性だけは。」
 あきれたように王天君は言うけれど。
「当たり前じゃ。コレぐらいでないと申公豹につきあってられんわ」
 そう言うとブンブンと腕を振り回す。王天君は、そうやって前を向く太公望をまぶしく感じる。自分にまだないモノを見る。

 嫌われるのが恐くないのだろうか?
 イヤな顔をされるのが嫌じゃないのだろうか?

「あのよ、
 あーーーんなにイヤがられてるのにどうして申公豹の所に行くんだ?」
 疑問をぶつけてみる。
「もとろん好きじゃからじゃ!!」
 しれ〜と答える太公望。
 そういえばこいつもどこかひん曲がってたっけ・・・。
「うなこと聞いてんじゃねーよ!!」
 変にノロケでもされたらぶっ飛ばしてやろう!そう思わずにはいられない。じぃーと睨み付けてやる。流石にもう一人の自分に睨み付けられて、太公望はため息を付く。

「・・・他人と同じじゃイヤなんじゃ」
「ん?」
 前を向いていた太公望の目はいつの間にか自分に向けられていた。

「わしが封神計画の実行者だから、あやつはわしに気が付いた。
 だが今は?
 今のわしはあやつを引きつけるモノがない。
 ・・・・・だから会いに行く。わしを知って欲しいから」

「・・・十分引きつけるモンはあると思うがな。・・・オレとか」
 ムッとした目が王天君の方を向く。

「『わし』を見てほいんじゃ!」
 ムス〜として先を歩き出す太公望の横を王天君も着いていく。

「『他人』と区別するのに十分じゃないのか?」

「『わし』だけを好きになってほしい。
 それがだめなら『わし』だけを嫌ってほしい」

「・・・・・そうだな」
 太公望の言葉を聞いて王天君は立ち止まる。その気持ちは分かる。相手に自分という感情を持たせたいのだ。それが「好き」であったり「嫌い」であっても、その感情を出させたヤツのもの。
 何よりも強い感情で区別して欲しい。

「流石同じ人間(?)になった仲じゃ。分かるな!」
 太公望はにこやかに微笑むと、立ち止まった王天君の頭に一発どつきを入れる。
「いってーーーーーー!何しやがる!??」
 頭を押さえてうずくまる王天君。
「王天君に分かるなら申公豹にも分かるハズ!」
「・・・・・おめぇは強いなぁ(ため息付き)」
 呆れてしまうほどのその力は一体どこから来てるのか?

「ふ、強くなければ生きていけない、
 優しくなければ生きる資格がない」
 どこかのハードボイルドのセリフをいいはなつ。

「わしは平凡な男故、相手には大物を望むのじゃ!!」

 一体何処に叫んでいるのか太公望が吠える。
 どこが『へーぼん』なんだ!??大物?そりゃ『高嶺の花』だろ!!王天君は心の中でツッこみを入れる。

「さ、行くぞ!」
 ハッと気付くと腕を捕まれてた。
「てめ・・・オレは行かねーぞ!イチャつくなら勝手にイチャつきやがれ!!
 オレを巻き込むな!!!!!」
 こいつはわざと逆鱗に触れる・・・その時一緒にいたくない!!
 王天君の叫びも空しく引きずられていく。
「ふふふ、知っとるぞ。お主も申公豹のことを気に入っておるのは!同じ人間じゃがライバルはライバル・・・変に気を使われるよりは一緒に行くぞ!!」
 一瞬真っ赤になった王天君だが、こんなのと一緒にされてはかなわないと大声で叫ぶ。

「ふ、ふざけるなーーーーー!!」
 オレはこんなのと合体したのか・・・涙が出そうな王天君だった。





今日も会いに行く

明日も会いに行く

あなたの『特別』になりたい


「強くなければ・・・」はチャンドラー。
01/07/17 ★ MAGIC CHANNEL / キル