* 流れ星 *







 墨を零したような闇が広がる夜空に、小さな星々が輝いている。気まぐれに星は銀の尾を描いて流れていく。
 金鰲島の牢からはじめて外に出た王奕は、夜の冷気も気にせず、ただただ美しい星空を見上げていた。

「あらん、流れ星ねん」
 鈴のような声が聞こえ、花の香りが広がっていく。王奕の後ろから現れた妲己は星よりも輝いていた。
「流れ星に願い事をするとかなうというわん。なにかお願い事した?」
「・・・復讐を」
「あら、こわい。誰に復讐するのん?」
 クスクスと軽やかな声が闇に響く。

「・・・揚

「ああ、あなたの変わりに仙人界で幸せに暮らしてる子ねん」
 王奕の体がピクッと震える。王奕を牢に入れた通天教主、その子供揚
 妲己は優しい声で王奕の憎しみをうながしていく。
「それから?」

「・・・元始天尊」

「あなたを壊した諸悪の根元よねぇ」
 王奕を楊とを交換し、金鰲島に送りこみ、近い未来に行われる封神計画を実行しようとする者。
 知らず知らず王奕は手を握りしめていく。

「また流れるわん。知ってる?あの流れる星は死んでいく星なの。人の願いを叶えるために、あの星は死んでいくの。まるで呪詛のひとつね」

 小さな子供に諭すように語り、妲己は王奕を後ろから優しく抱きしめた。

「だから・・・あなたの願いをかなえるためには、その身を捧げなければならないの。わかるわねん?」

「ああ」
 王奕はうなずく。どうすればいいのかわかっていた。

今までの名を捨てる。
そして自分の魂を分け、新しい名前となり、憎むべき『敵』をただ殺すのではない、苦しめるのだ。



「悪夢は終わったわ。
さあ、今度はあなたが悪夢を見せてあげなさい」











03/05/12 ★ MAGIC CHANNEL / キル