星 に 願 い を
太公望が大きな笹を持って申公豹の元にやってきた。 「・・・・・七夕ですか」 「そうじゃ。一年に一度会える恋人達の出会いを一緒に楽しもう」 一年に一度。雨の日には天の川での逢瀬も出来ない彦星と織り姫を思うと、どんなに申公豹につれなくされてもつれなくされても、いつでも会える太公望はマシかも知れないと思うのだった。 申公豹といつも会ってないと忘れられるのでは不安に思うのだ。太公望の腕の中に収まらない、まるで幻のような存在。 「お主も手伝わぬか」 太公望は笹の葉に飾る短冊やリングを作り出した。申公豹は短冊を持って太公望に聞いた。 「なにか願い事をかけるんですか?」 「あたりまえじゃろ。その為の七夕じゃからな」 じっと短冊を見つめる申公豹。久遠の時を生きる申公豹には難しい問いに思えた。 「・・・一体、何を願えばいいんでしょうね。あなたの願い事はなんなんです?」 「え、わしか?ワシはいっぱいあるからのぅ。だから短冊もたくさん持ってきたんじゃ」 うれしそうに答える太公望はどうみてもおこちゃまだった。 「そうですか・・・」 そんな太公望を見て笑みを浮かべる。 「・・・願いはかなわなくてもいいじゃ。そう書くことによって自分をその方向にもっていく気持ちなんだから」 「気持ち・・・ですか?」 「そうじゃ。だから『申公豹と一緒にいたい』とか『申公豹と一緒にいたい』とか『申公豹と一緒にいたい』とか、ワシの願いは決意の現れじゃ!」 そういうと『申公豹と一緒にいたい』と書かれた短冊をババ−ンと見せる。 「・・・・・はぁ。」 呆然としてしまう。 なんてパワー。 自分への真っ直ぐな願いに。 でもそのくすぐったい願いは嫌いではない。申公豹はいつの間にか笑っていた。 「なら私も何か書きますね」 「な、何を書くんじゃ!?」 「秘密です」 「ワシのは教えたじゃろ!!」 「勝手にあなたが言ったんです」 二人して大きな笹に飾り付けをしていく。七夕の澄み渡る夜空に負けないように。 太公望が笹の一番てっぺんに自分の短冊を飾ってる間に、申公豹はあっというまに自分の短冊を飾ってしまっていた。 『この気持ちが本当でありますように』 自分の中の小さな星。その星は輝き続けるだろうか? 「太公望、後で星の見えるところに行きませんか?」 一年に一度会う恋人達を見に。 「それなら月餅や仙桃も持って行こう」 すっかり夜のピクニックになっていく。 二人手を繋ぎ星の見えるところまで歩く。この長く短い一瞬の時間。太公望は星に願う。 『ずっと一緒にいれますように』と。 仙人として、長い時間を一緒に生きていられるのだから。
01/07/07 ★ MAGIC CHANNEL / キル
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