全国高等学校アメリカンフットボール大会、開会式が終わり、選手達は次々に帰っていく。これから各自、試合が待っている。ここでぐずぐずしてるヒマはない。
それでもセナは、キョロキョロと大量の選手達を見ていた。いや探していた。たった一人の選手を。王城ホワイトナイツの進清十郎を探していた。
泥門デビルバッツはAブロック。
王城ホワイトナイツはBブロック。
今、会わないと当分会えない。決勝進出まで会えないのだ。なにを言いたいわけでもない。一目見たかった。
『決勝で待つ』
そう言ってくれた人に。
「糞チビ、行くぞっ!」
「ま、待って下さい、もうちょっとだけ」
「うっせい!早くしろ!!!」
「ひー」
ヒル魔のマシンガンが連射され、セナは逃げ跳ねる。
会えないのか・・・と残念に思っていると、人だかりが割れていく。まるで十戒のように、人の海が引いていく。
出入り口にいた者の視線が奥へ、人を割った者へと集まっていく。
白いユニホーム、水色のカラーポイント。
王者、王城ホワイトナイツが出てきた。
迫力に押されながら背番号40番を探していると、人出に押されポンッとセナは押し出されてしまった。
―――は、はずかしー。
アイシールドで人に顔は見えないのだが、セナは真っ赤になっていた。
「アイシールドか」
「はい?」
声の方を見ると、そこに高校最強の男が立ち止まっていた。
「進さん・・・」
喉が緊張で鳴る。身長差20センチ、セナは進を見上げる。高く、大きく、強い存在を。そして・・・
「決勝で会いましょう」
セナがそう言うと、進は一瞬驚いたようにセナを見、そしてほんの少し、笑った。
「ああ」
滅多にない笑った進にセナは見惚れた。
「糞チビ、ホレ、俺らも行くぞ!」
その様子を見てたヒル魔が固まっているセナに声をかける。
セナをはさみ、ヒル魔と進の視線があった。
二人の間に走る一瞬のスパーク。強烈な火花が熾った。
だが二人の視線はすぐに外され、進は試合会場に向かう。ヒル魔はセナを引きずって第2会場へ。
スパークを感じたのは二人の間にいたセナだけだった。
「いやー、糞ガキだ糞チビだと思ってたが、なかなかやるねー、アイシールド君は」
ヒル魔は上機嫌でセナのユニホームの首根っこを引きずっている。セナはされるがままだ。
「なんですが?」
「進に言っただろ、『決勝で会いましょう』って」
「はい」
「それって、王城以外敵じゃない、って聞こえるぜ」
「そ、そんなつもりはないですよー!」
「ケケケ」
慌てびびるセナを連れながら、ヒル魔は楽しそうに笑った。
すべては始まったばかり。
すべてはこれから。
―――すべては勝利の上に。
■まさか長野に行くとは(笑)。
ヒル進、と言ってみる試み。
04/07/05 ★ MAGIC CHANNEL / キル