- 今、そこにある鉛 -

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 夏の暑い昼下がり。
 静かな住宅地のどこからか聞こえてくる風鈴の音は一瞬暑さを忘れさせる。
「こんにちはー」
 約束の時間通りに桜庭が進の家に行くと、鍵がかかっていた。
 電話をかけても、進の家中の電話の鳴る音が遠くから聞こえるが、誰も出る気配がない。
 こういう時に進が携帯電話を持っていたら・・・と考えるが機械類は苦手で破壊する傾向がある進を知ってるだけに、薦められないでいる。
 どうしたのか、どうしようかと進の家の回りを歩いていると、熱心に、半分くらいは意地になって、草むしりをしている・・・
「・・・進?」
「ん?桜庭か。もうそんな時間だったか?」
「・・・うん」
 滝のような汗を拭い、麦わらの帽子をかぶり、首にはタオルをかけた進の姿がみょうに似合っていた。
「後は集めてゴミ袋に詰めるだけだ。待っててくれ」
「あ、手伝うよ」
 塀に置いてあった竹箒を桜庭が手に持つと驚いた。
「うわっ!な、なに?!コレ?」
「なにと言われても・・・竹箒だろう」
「じゃなくて、重いよ!」
「ああ、が入っているからな」
「なまりぃー!?」
「ああ」
 そういうと、桜庭の手がひねりそうになった竹箒をひょいと持って、むしった草を掃いていく。さすがベンチプレス140キロ。
 桜庭は呆然とその様子を見ていた。

 それから家に入れてもらい、シャワーを浴びた進が冷たい麦茶を持ってきた。
「すまなかった」
「え?」
「待たせてしまって」
 進が謝ることなどまずない。驚きと感動で鐘が鳴り、桜庭の前を天使が舞っているようだ。
「いいよー。俺も待たせちゃうこと多いし」
「そうだな」
「・・・・・」
 ヤブヘビだ。天使は申し訳なさそうに通り過ぎていく・・・。
 桜庭は静かに麦茶を飲んだ。同じように麦茶を飲んでる進を見ると、リストバンドをしていた。
「めずらしいね。買ったの?見せてー」
 これぐらいでめげていては進とやっていけない。強引に話題を変えて、進のしている黒のリストバンドを指さした。
「―――ああ」
 どの問いもとりあえず返事をした進は、リストバンドを桜庭に渡した。
 勉強教えてもらってるお礼に買ってこようかなあ、好みの色聞かなくちゃ、と桜庭が手に取ると・・・
重いよ!」
が入っているからな」
「また鉛!?なんでー!」
「鍛えるためだ」
 進の足を見ると同じようなアンクルウェイトが・・・と思ったがあえて聞かなかった。
「・・・すごいね」
「まだまだだ」
「スポコンみたい・・・」
「すぽーん?」
「それアメコミ」
「れでぃこみ?」
「いやそれは・・・」

オチない・・・


■「ハンター×ハンター」ゾルディック家(キルアんち)みたいな進の家、妄想。
04/06/22 ★ MAGIC CHANNEL / キル