遠くまで

第209話「越えて行く」より




 それは一瞬のこと。
 頭の中が真っ白になり、ビビは動けなかった。
 ペルが砲弾を大空へ持ち上げ、時計塔を飛び去った。
 上へ上へ、遠くまで。
 ビビの手が届かない所にペルは行ってしまった。

 空での大きな爆発に空気が震える。
 いや震えているのはビビ自身かも知れない。爆弾が無くなりアルバスタは救われたのかも知れない・・・でもペルは?!さっきまでここで話していたハズなのに・・・

 一歩また一歩、ペルが居た場所に呆然と歩みよる。
 はっと気が付くと次の足の下は何もなく、まだ戦いを続けているのが見える。
 今の爆発も気付かなかったのか、とビビは呆然とする以外なかった。





 ポタッ。
 何かが顔に当たり顔に手をやると、赤い血が流れた。
「・・・・・!!!!!」
 この血は・・・
 この血は・・・・・・・・・・・
空から落ちてきたものにビビは涙した。
何もできなかった自分の無力さを憎んだ。



 空に目をやると、爆発のせいで雲ははれ大空が見えた。
 まだ全ては終わっていない・・・
 手の中の赤い血をぎゅっと握りしめる。そして心の底から祈る。アルバスタの平和を。



 今私に出来ることを・・・・・



「戦いを!!!やめてください!!!
 戦いを止めて下さい!!!」

あの爆発でさえ戦ってる人達は気付かなかった。でも私には叫ぶしかない。



「戦いを止めて下さい!!!」



 どうか・・・
 奇跡を願わずには居られない・・・


■ペルのアレって江戸川乱歩「パノラマ島奇談」人間花火だよね・・・。

CULT BITTER / キル