新婚さん、いらっしゃ〜い!




「あら。これって、ここでもやってるんですね」
 宿泊したホテルのロビー。
 その一角でくつろいでいるサンジと、おこづかい帳・・・もとい家計簿をつけるしっかり者のナミと、ロビーのテレビを見ているビビがいた。

「『新婚さん、いらっしゃ〜い!』って私が子供の頃からやってるから、そうとう長いですよね」
「新婚さん・・・いい響きですね」
 ビビの隣でサンジがニコニコと話を聞いている。
「たまに見るとなんだかおもしろくって、最後まで見てしまうんですよね〜。芸人さんの話だと、練ってあって笑わそうって部分があるじゃないですか。でも新婚シロウトさんの話って、もう凝縮ってかんじでスっゴイんですよね。言葉に郷土色が出てて、おもしろい新婚さんばっかりだし、どっから探してくるのか不思議ですね」
「確か応募じゃなかった?」
 ボソッとナミが答える。
「応募なら・・・ビビちゃん、将来出ようね〜!」
「それからサンシさんがね」
 サンジの言葉はきれいに無視された・・・。ナミは声を出さず肩をふるわせ笑う。

「新婚さんのボケに椅子から転げちゃって!あれはもう、芸の一種ですね」
 関心するビビに、サンジがポンポンと肩を叩く。
「そのうちに、椅子からボヨヨーンって、でっかいスプリングが出てくるよ。そしてスパイ物の脱出みたいに会場の端まで飛んでいくようになるよ」
「えー、そこまでしたら・・・」
「大丈夫、だってサンシさん機械化の話もあるようだし(注意;ありません)、『新婚さん、いらっしゃ〜い!』は永遠に不滅です(※たぶん)」
「そ、そうでしょうか?」
「だって『ヨシモト』だよ。ヨシモトはそれぐらいするよ!(※偏見ですが、そうじゃないとは言いきれないところがあります)」
「なるほど」
「それにね・・・」
「・・・・・」
 ツッコミのないボケ二人にナミはどこで止めるべきか考えていた。今ここにハリセンさえあれば『いいかげんにしなさい!』と言えるのに・・・と。(似合いすぎるよ、ナミさん)



「そう言えば・・・ずっと気になってたことがあるんです」
「気になってたこと?」
「はい。最後ゲームがあるでしょう」
 ゲストの新婚さん二組が神経衰弱をして、出たカードの賞品がもらえるゲームのことだ。
「ゲームの賞品にアレが必ずあるでしょう。子供のときから不思議だったんですよね。」
「アレって?」

「イエス・ノー枕」

「へ・・・?」
「なんでイエス・ノー枕って、ずっと賞品に入ってるんでしょうね?」
 ビビは不思議そうに考えている。その姿は天然だ。サンジはボケではないビビの言葉にどう返そうか固まってしまった。対してナミは腹を抱えて爆笑していた。

「ナミさん、イエス・ノー枕の意味、わかるんですか?」
「ハハハ、二人がくっついたらプレゼントするわ!」
「えー!普通のでいいじゃないですか」
「いいえ、新婚さんには必要なものだもの!ね、サンジくん!」
 笑いすぎてるナミは、固まってるサンジに話をふった。
「え?」
「サンジさんもイエス・ノー枕の意味、わかるんですか?」
 純粋なビビの目がサンジの方に向けられ次の言葉を待っている。その目がまぶしい・・・。
 期待に満ちた子犬のような目で見られると、なんと答えればいいのか悩んでしまう。サンジの中で葛藤が起きる。天使の誘惑と悪魔の囁きだ。ウーン、ウーン唸りながらも、これってお誘いでもあるなーと考える。





「・・・・・今夜教えてあげまショ」
 ボソッとサンジが言う。天使の誘惑と悪魔の囁きの答えだ。
「今じゃなくて?」
 ビビが不思議そうに聞く。
「今の方がいいんじゃない?」
 ナミがニヤニヤ笑いながら促す。
 サンジもそう言われればそうだな、と考え直す。
「・・・今にしようか。じゃ、ビビちゃん行こうか」
 うれしそうにサンジがビビの手を取って立ち上がる。ビビも分からないながらもついていこうとする。
「ビビ、ちなみに今の状態は『イエス』よ」
「?」
「じゃね、ナミさん」

 ・・・棚からぼた餅。
 これからお部屋に戻って・・・ニヤつきながら思いめぐらすサンジであった。










 イエス・ノー枕とは・・・。

「今日の夜のお相手はイエス?ノー?」
 ってなことを枕でサインする新婚さんアイテムなのねん★










 ビビちゃんは『イエス・ノー枕』の意味を体で知ることになったとさ。


めでたし、めでたし。
(いいのかな・・・)


03/01/064 ★ CULT BITTER / キル