雨 の 日



 海賊なんてやってると、多かれ少なかれ体に傷がある。
 傷が勲章なんて訳はなく、生き残った証のようなもの。強くなければやってけない。きれいな体のまま生き残れない。
 そこに宝があるのなら進まずにはおられない。命を賭ける価値あるモノを求めている。

 しかしどんな強い海賊でも、冬や雨の日には体に受けた古傷が痛んだりする。
 疼く古傷に気弱になる・・・かもしれない。



 サンジも雨の日になると、名もない国で受けた腰の傷が痛みだす。
 そして痛みと共に思い出す。
 ナミの熱、ビビが目の前で撃たれたこと、チョッパーが仲間になったこと。

 サンジは腰を負傷し、ドクター・くれはとチョッパーの大手術を受けた。その辺のことはあまり思い出したくないものだが、そのことを差し引いてもサンジの中で思い出すのは・・・・・



 ビビの心配げな顔がホッとした顔に変わったアップ。

 白い手がサンジの額を撫でる。

「サンジさん」

 自分を呼ぶ優しい声。



 サンジが目が覚めて最初に見たのは、サンジを心配するビビの姿だった。
 数秒のことなのに、スローモーションのようにゆっくりと流れる場面。

 ああ、この時のビビちゃんの心は、俺だけが占めてたんだ

 今ならそう思う。
 ビビの心はアラバスタが占めていて、それはほんの一瞬のことかもれしないが彼女の心を独り占めした時だった。そう気が付いたのはビビがアラバスタに残り、別れてからだった。




 朝からの雨はなかなか止まず、誰もが部屋で雨音を聞いている。
 キッチンの窓には次から次へと雨粒があたり流れるすじを作っていく。
 サンジはキッチンで一人煙草を吸い、静かな時間を過ごしていく。

 こんな静かな雨の日には、今そばにいない蒼い髪の王女のことを思い出し、古傷が疼き出す。

 ・・・・・寂しくてたまらない気持ちが溢れ出す。


■私の手の甲には友達んちの猫に引っかかれた傷があります。 その猫はいなくなってしまったんですが、私の手には傷が残ってて、傷に気付いたときなんかにその猫のことを思い出します。
■「僕の恋人は青い猫」と傷つながり。

02/12/02 ★ CULT BITTER / キル