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彼らが来て、急に急展開に動き出した。 いい方向に? それとも・・・。 任務の失敗・・・と思ったらバロックワークスに私の正体がバレ追われる身になってしまった。 囮になったイガラムの乗った船は、私の目の前で轟音と共に燃え上がった・・・。 そして、ゴーイングメリー号の人達を巻き込んでアルバスタへ進むことに。 強いやつと戦えると喜んだり、十億ベリーの報酬で私が戦いに巻き込んでしまった人達。 そんなことでいいの?!十億ベリーでも命は買えないのよ!。 イガラムの死に同情してくれてるのだろうか。私は人のいいこの人達を、イガラムの死さえ利用してアルバスタに進もうとしている・・・。 まったくこんなんでいいの?と思う海賊達。他の海賊団を知らないからかも知れないけれど。 「悩む気も失せるでしょう、こんな船じゃ」 ナミさんのこの一言で少し肩の力がぬける。当たり前だけど海賊も普通の日常をおくるもんなんだと改めて思った。 『日常』なんて、アルバスタを出てから過ごしたことがないからかもしれない。バロックワークスでは正体がばれないよう気を抜けなかったから。 私は偽りの『ミス・ウェンズデー』からただの『ビビ』として、この船に慣れていった。 船の生活は色々いそがしいと思っていたけれど、どうやら違うようだ。風雨などで海が荒れない限り、のんびりと過ごせる。 あまりのんびり過ぎて、私はつらくなる。そんな気持ちの時、サンジさんはよくお茶に誘ってくれた。 はじめてサンジさんが入れてくれたお茶はを見たときはびっくりした。 「・・・紅茶に何か入ってるんですけど」 「ええ、イチゴとリンゴです」 驚いて見ている私を、楽しそうに見ながら説明してくれた。 「これはフレッシュフルーツティーっていうんです。ハーブティはメジャーだけど、生のフルーツを入れる紅茶ってのは、あまり馴染みがないかな。でもいい香りがするでしょう?」 「・・・ええ」 目をつぶり、フルーツの香りを吸いこんだ。 「香りと演出のために、カップにフルーツを入れているんだ。紅茶が注がれるまで放置すると、そのままじゃ変色するから甘口のロゼワインをちょっと入ってるよ。あ、カップに入れておいたフルーツは、食べてもあまりおいしいもじゃないからカップの外に出しておいてね」 「はい」 フルーツをカップから取りだし、一口飲んでみる。フルーツの香りが私の中で広がる。 「・・・おいしい」 ティーカップも上品なもので目で楽しみ、香りを楽しみ、味を楽しむ。そんな当たり前のことを、私は感じる余裕がなかったんだ、と気付く。特に香りは私の張りつめた私の心をほぐしてくれた。 そしてこの時間も楽しんだ。サンジさんの話は楽しかった。 はじめは軽い人だな、と思っていたけれど、色々気をつかってくれるのがわかってくる。この時間がなければわからなかったことだ。 ゆったりとお茶を楽しむ時間は、私の心を軽くしてくれた。 「おいしいです」 「よかった」 バタンッとドアが大きな音をたて開いた。 「何か食ってるのか?」 ルフィさんが大きな魚を持ってキッチンに現れた。 「お、魚釣れたのか!」 「何か食ってたのか?」 「食ってねえよ。昼飯はこれでいくか」 喜々としてサンジさんは魚を受け取ろうとするが、ルフィさんは渡そうとしない。 「食いもんは?」 「ねえよ。ねー、ビビちゃん」 うらめしそうな目がこちらに向けられる。うう、こわい。食べ物の恨みはこわいだろうな。 「ええ。お茶を飲んでたんです」 無実を証明するようにテーブルを見せる。 「・・・・・サンジ、俺にもお茶くれ」 「おう」 サンジさんはマグカップにティーパックを入れ、お湯を注ぎ渡した。 「ほらよ。もっと魚釣ってこいよ」 そういうと、ルフィさんを追い出した。 「あの・・・」 「はい?」 「まだティポットにあるのを入れてあげた方がよくなかったですか?」 ティポットを持ち上げ、重みの確認をする。まだあるよね。 「だーめ、だめ。これはビビちゃんに入れたものだから。ルフィには質より量だからあれで十分。それに・・・」 「それに?」 「俺とビビちゃんのお茶会の邪魔しやがったしね」 こっちにウインクする。 「・・・そうですね」 ルフィさんには悪いけどこの時間は大事だな。そう思うとクスクス笑ってしまった。 「ビビちゃん、もう一杯いかがです?」 「ええ、お願いします」 サンジさんが優雅に紅茶を入れる様子を見つめる。なんて優しそうに扱うんだろう。海賊なのに、なんてきれいな指なんだろう。なんて・・・優しそうに話しかけるんだろう・・・。 ■フレッシュフルーツティーは「おいしい紅茶の選び方」さんの「おいしい紅茶でいこう!Vol.09」から引用しました。
05/01/14 ★ CULT BITTER / キル
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