ビビ・キッス!
… U …



 慌てて部屋から出たサンジは胸をバクバクさせていた。
 ずっとビビちゃんかわいいな〜 、ビビちゃんケナゲだよな、がんばれビビちゃん!と見守ってきたハズが・・・まさかまさかのこれが『恋』!??
 サンジの頭は今ぐるぐると今までのことが走馬燈のように流れていた。今まで女の方から自分によってきた。それを『来るもの拒まず』でずっとやってきた・・・

 もしかしたら・・・・・・
 自分から好きになったのは初めてかも知れない・・・・・・
 もしかしたら・・・
 『初恋』かぁ〜〜〜〜!!????

 サンジ、19歳の初恋。

「ハ、ハハハ・・・」
 タバコの煙が目に入るのか涙目になりながら、笑うに笑えない状態に陥っていた。
 とにかく、落ち着かねば・・・とキッチンへ向かう。

 中に入るとゾロが水を飲んでた。ゾロの持ってたコップを奪い取り
「もらうぞ・・・」
 一言声をかけ、少し落ち着かねば・・・と一気に水を飲みほす。
「あ!」
 ゾロは声をかけるのが遅れ、サンジの一気飲みを見ることになった。

 水を飲み干してるハズなのに喉にくるこの香り、飲み心地・・・
 ―――こりゃ酒じゃねーかーーー!!!またこの野郎かっくらってやがったな!!
 ドン!とコップを机にぶったたく様に置くとゾロを睨み付ける。
「クソ剣士・・・てめ・・・!!」
「・・・ほれ、飲むか?」
 悪びれる様子もなくゾロはサンジに後ろに隠し持ってた日本酒を差し出す。
「・・・・・くそ!!飲むぞ!!!」
 落ち着くどころか、ますます思考が乱れていくサンジだった・・・






 一方ビビの方は・・・・・
 今だ顔を真っ赤にしてサンジと同じく胸をドキドキさせていた。
「大丈夫か?顔、真っ赤だぞ?」
「・・・チョッパー、それは気にしないでいいと思うわ」
 あきれたようにナミが言う。
「そうなのか?」

 ビビは何とか落ち着こうと、『寿限無寿限無五劫のすりきれ・・・』と心の中でつぶやく(何で知ってる?)。コックさんだから食欲がないのを心配して、ついでに熱も計っていった・・・と思おうとするが、そう思うとビビの胸が痛くなってくる。『パイポ、パイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーの』どれほど呪文(?)を言って落ち着こうとしても、ビビのドキドキは止まらなくなっていった。

 その時・・・
 ドクン!
 ビビの中で何かが息づいた波動が響いた。

「・・・イタッ」
 突然ビビが背中を押さえる。
「どうした?」
「どーしたの?」
 チョッパーとナミが同時に叫ぶ。
「背中が・・・」
 ビビは苦しげな表情で答える。
 チョッパーがビビの背中を見てる横でナミは、なぜ背中?と考えていた。
「あれ?ビビの背中にあざなんかあったのか?」
「いいえ。ないですよ」
 ビビの背中、肩甲骨の所にあざらしき物が浮き出ていた。それを見てチョッパーとナミは考える。

『どこかで見たような・・・』

「でもさっきよりマシになりました」
「どこが・・・」
 そう言うとナミはビビのあざの部分を触ると、ビビは声に出ない悲鳴を上げる。ウルウル涙目になって耐えてるようだ。
「背中以外に痛いところはないのか?」
「・・・はい。他は大丈夫ですぅ」
「う〜〜〜〜ん」
 チョッパーは考え込んでしまった。食欲がなくて背中のあざと痛み。この模様、どこかで見たような気がするがどこでだったが・・・
「何か変な物食べたか?」
「ビビの食欲無くなったのって、確かドリアンパーティの時からだっけ?」
 ドリアンパーティ・・・臭い強烈だったね〜〜〜と三人笑うが、その時もビビは食べてない。
「そういえば・・・」
「なに!?」
 まるで謎を解こうとしてる探偵のようなチョッパーとナミがビビに詰め寄る。
「買ったお店でもらった見たことのない果物食べました。でも熟してなかったのかまずかったです」
「!」
 ビビは苦笑して話すが、二人の探偵(?)にはある一瞬のひらめきがあった!
 ナミががさごそと部屋を探して紙とペンを出す。
「これにどんな感じの果物だったか描いてくれない?」
「え、描くんですか?」
 チョッパーとナミがあまりに真剣なので、ビビは思い出しながら描いてみた。
 形は丸くて変なうずの模様みたいなのがあって、ちょっと見はメロンみたいで・・・
「こんな感じです」
 我ながらよくできたと、ビビは自信を持って二人に見せた。
 が。
 ビビの絵を見た二人は凍り付く・・・
「・・・これって・・・・・」
「どうかしたんですか?」
 二人の反応に不安になるビビ。

「だーいじょうぶよ。ただ食欲がなくて背中が痛いくらいなら、何とかなるわよ!!」
 まるで自分を納得させるかのようにナミが大声で言う。
「そーだな!他はどうもなってないしな!!」
 チョッパーも同意する。
 そんな二人をビビは不信げに眺める。
 気まずい沈黙が流れる・・・・・
「・・・とにかく一日一回チョッパーに今の具合を報告してね」
 まとめに入るナミ。
「うん。食欲は・・・でてきたときにおもいきり食べろ。無理はするな」
 便乗するチョッパー。
「??はい、わかりました」
 まったく訳の分からないビビであった。


CULT BITTER / キル