あるかも知れない もうひとつの結末・・・・・ アラバスタ王国はクロコダイルに乗っ取られた。 - I F -
間に合わなかった。 国王軍と反乱軍との戦いはなんとか阻止できた。 しかしバロックワ−クス、クロコダイルは阻止できなかった。麦藁海賊団ルフィ達の力を持ってしても、敵わなかったのだ・・・ 燃える宮殿。 倒れる人々。 巨大な敵に希望が潰える。 「逃げるんです、ビビ様」 「早く逃げろ!!」 チャカとコーザに守られビビに逃げるように促す。 「イヤよ!! もう、もう逃げるなんて、いや!! 最後まで戦います!」 唇をかみ、前を必死に見つめる王女。 まだ15歳のその体は、傷ついていた。いやそれ以上に心が傷ついていただろう。 アラバスタを守るため、敵方にスパイとして入り込み任務を遂行し、海賊を味方とし祖国に戻ってきた。 全ては希望のために。 しかしビビには分かってなかった。 ビビこそが「希望」なのだと! 「お前まで戦ってどうなる!? 今お前にはやるべき事があるだろ!!」 「・・・・・いやよ、リーダー・・・・・ みんなを・・・・・みんなを見捨てる事なんて出来ない!!」 その叫びと一緒にビビの目から涙がこぼれる。 「ふん・・・・・きれいだな・・・・・」 「えっ?」 その一瞬の隙にコーザはビビに当て身を喰らわした。 「コ、コーザ!??」 チャカは慌ててビビを抱き留める。 「・・・・・ここはオレらに任せろ。 その間にビビをこの国に連れてきた海賊団に頼むんだ。 ビビには・・・ こいつには、生きててもらわねえとな!」 そう言うとコーザは戦いの中に戻っていく。 「コーザ!!」 コーザは振り返らず、剣を持った右手を上げ少し振り回した。 「・・・・・・すまない」 チャカはコーザの後ろ姿に頭を下げた。 宮殿が燃えている。 「ビビ、目を覚ました?」 まだちゃんと覚醒していないのかビビはまだ起きない。しかし目が少し覚めたことで、腹部に痛みが走る。その痛みで全てを思い出す。 「こ、ここは?」 今まで自分の看病をしてただろうナミに聞く。 「ここはゴーイング・メリー号よ」 ナミの姿に痛々しい包帯が目を引く。 「・・・・・ナミさん、その怪我は?」 震える声でビビは問いかける。一つ聞いてしまえば後から後から聞きたいことがわき上がる。ナミの胸ぐらをつかみ問いただす。 「みんなは?無事なんですか? どうして私、この船に乗ってるんです? 国は・・・・・・・・アラバスタは、どうなったんです?!!」 ナミはビビの髪をひとなですると、静かな声で応えた。 「みんなは無事よ。ちょっと怪我してるけどいつものことだしね。 あなたのことはチャカって人に頼まれたの。『くれぐれもよろしく』って」 呆然とビビはナミを見つめる。 「アルバスタは・・・・ クロコダイルの手に落ちたわ・・・・・・・・・・」 ―――夢だったらよかったのに。 ビビは自分がガラガラと壊れていくような気がした。 あの戦いの時、確かに実感した事だが人の口から改めて聞くショックがあった。 守れなかったアルバスタ・・・・・ それなのに何故私は生きている!? 人を犠牲にしてまで生きたのに、また同じ事を私はしているのか? 私にそれだけの生きる価値はあるのか!!? かみしめる唇から血が出てくる。その鉄の味さえ意味がない。 「ビビ・・・・」 心配げにナミは声をかける。ナミは出来るなら抱きしめて上げたかった。しかし抱きしめたら、ビビは砂のようにぼれていくのではないか、壊れていくのではないかと思わせた。 「・・・みなさんの怪我の具合はどうなんです?」 「ルフィが一番ヒドイかも。でもうちには最高の船医がいるからすぐ治るわ」 「・・・すいません」 「なんでビビが謝るのよ?」 「巻き込んでしまったわ」 さっきから下を向いたまま話すビビに、ナミはビビの顔を上げ目を見て話す。 まだ死んでないビビの目。 「何度も言ってると思うけど、私達は仲間なのよ。 あなたも負けたけど、私達も負けたのよ! クロコダイルは、私達の敵よ!!」 「・・・・・次は勝つ!!」 いつの間に来たのかルフィがドアに寄り添っていた。 その姿はいつものルフィからは考えられないほど痛々しく殺気だっていた。しかし次の瞬間いつもの雰囲気に戻り、にかーとビビに笑いかけた。 「大丈夫か?お前らの部屋で声が聞こえたから見に来たんだ」 そう言うとビビの頭を撫でた。 「ナミが自殺でもすんじゃないかって、ずっげー心配してったぞ」 「ル、ルフィ!」 ナミは慌ててルフィを制止するがルフィは聞かない。 「オレは大丈夫だっていってんのによー。なぁビビ。 お前は自殺するようなたまか?」 ・・・・・自殺? なぜ自ら死のうと思うの? 私が? まだ何も救えてないわたしが? そう思うと笑えてくる。 「ええ、私は自殺なんてしないわ」 ルフィの目を見て答える。その目に嘘はない。 「生き残ったのなら、やるべき事がある。 ・・・・・死ぬのは全て終わってからでいいわ」 「やっぱビビはオレの見込んだ女だよな」 シシシとルフィはビビの頭をガシガシなでる。 そして真顔になってビビに言う。 「でも。 今は吐き出してしまえ」 「え?」 「自分の中に閉じこめようとしてるのを吐き出してしまえ」 「吐き出すって・・・?」 「泣けよ」 「えっ?」 「泣いてしまえよ」 「イヤよ!!」 「今、俺の前で泣いてしまえよ!」 「・・・泣かないわ!泣くのも後よ!」 「オレの知らないとこで、お前が泣くのがヤなんだよ!」 「いやよ、泣きたくない、負けたくない、まだ泣けない!」 「泣けよ!いいから泣けよ! 泣け――――!」 ルフィこそ泣きそうに見えた。 そういうとルフィはビビを抱きしめた。まだ血と消毒薬の臭いのする体がビビを包む。ルフィの大声にビビは体をびくっと震わせ、抱きしめられたことに驚く。かたく固まっていたビビの感情が少しずつほぐれていく。ルフィに抱きしめられたことで解き放たれていく。いつの間にかビビはルフィの背を抱きしめていた。 泣き方を知らない王女に無理にでも感情を外に出させる。でなければ、狂ってしまっていたかもしれない。それほどの重任を一人で背負っている。仲間とはいえ肩代わりは出来ない。でも助けるは出来る。 「オレはアラバスタなんてどうでもいい。 でもお前がどうにかなるのはイヤなんだ」 いつの間にビビの目からかあふれてくる涙、なみだ。 まだ泣くことが出来ることにビビは驚いた。もうすっかり枯れ果ててしまったと思っていたから。 この涙がある限り生きていかなければいけない、願い続ければならない使命がビビにはある。 「わ、わたしは、負けないわ・・・・・・・ どんなことをしても生きて、生きてまたアルバスタを 元の国にかえしてみせる・・・・・!」 必ず・・・・! ビビは嗚咽を繰り返す。声を殺してルフィにしがみつく。ルフィはビビを抱きしめる手に力を込めた。 「ああ。
01/06/29 ★ CULT BITTER / キル
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■もし戦いを止められなかったら・・・て発想だったけど、そうなればビビちゃんは亡国の王女、復讐者!って思ったけど、書いててあまりにも重い使命でまだ15歳なのに・・・。