宝 物 庫
ビビは芸術品や宝石は苦手だという。 まさか、こんな理由があるとは・・・・・。 奇跡の雨が降り続き、外に行けず退屈していたナミとウソップとサンジはビビに宮殿を案内されていた。 「す、すこーい!!」 ナミはアラバスタ宮殿の宝物庫の中で歓声を上げた。 素晴らしい国宝級のお宝に目がハートマークをとばしている。 「すげぇな!」 一緒に中を見ているウソップも、飾られている芸術品を芸術家の目でひとつひとつ吟味していってる。 その様子を宝物庫の入り口からサンジとビビは見つめていた。 「ここ、見せちゃってよかったの?」 サンジは心配げにビビに尋ねた。 ビビをアラバスタに送り国を救う報酬に10億ベリーを要求したナミのことを思うと、サンジは アラバスタの財政を心配する。 「ええ。ここのものは、ナミさんも欲しがらないと思うし」 「そうかな?」 「ちょっと・・・その・・・いわくがあるものばかりで・・・」 「・・・そうなの?」 えへへ、と笑うビビは廊下に座り込んだ。サンジは煙草を取り出し吸い出した。 ビビは静かに話し始めた。 「どういうわけか、『いわくありげなものは王家に』って献上されるようになったんだそうです。 それが集まって出来たのがあの、宝物庫なんです」 「でも、警備とか手薄じゃない?海賊だからってんじゃないけど、あれじゃ盗まれるよ」 広い室内に王冠も宝石も絵画も金貨も、まるで無造作に置かれていた。それにいくら国を救ったとはいえ、海賊に国の宝をやすやすと見せていいものかと思っていた。 「・・・盗まれたことは一度もないです」 「へ!?」 「盗みに来た泥棒は、なにも盗まず逃げるか宝物庫で気絶してるかです」 「・・・それって」 「だから、たまぁ〜にお祓いとかしてるそうですよ」 「・・・へえ」 迷信等を気にする海の男にとっては、なんとも冷や汗ものの話だ。 「だから私、由緒ある芸術品や宝石って苦手なんです」 「そうだったのか・・・」 サンジは前に指輪を贈ろうとしてビビに話を聞いたことがあった。 自分に指輪をプレゼントされるとは思っていなかったビビは、正直に宝石は苦手だと言ってサンジを落ち込ませた。遠回しに断られた→振られたと思った悲しい思い出・・・。 それがまさか、こんな理由があるとは。 「王家ってなにかと噂があるんですよね」 「噂って?」 「出るんです」 火を付けようとくわえていた煙草が、サンジの口からポロッと落ちる。 「・・・見たことある?」 「まぁね・・・でもこの宮殿を守ってくれてるんですよ。多分」 ふふっと笑うビビに、引きつるサンジの顔が対照的だ。 「聞きたいですか?」 いたずらっ子のような顔でビビはサンジに聞いた。サンジは首をブンブンふり丁重に辞退した。 ナミとウソップはまだ中で歓声を上げている。 その声が悲鳴に変わるのも、もうすぐ・・・・・。
03/02/17 ★ CULT BITTER / キル
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