船 の 中 心



 甲板にチョッパーとカルーとビビがいるのを最近よく見かける。
 3人はお互いのことを、楽しそうに話している。
 チョッパーの思い出話や、ビビとカルーとの思い出話、ビビの国の話・・・。話すことはいっぱいあり、聞き手がいるのはうれしいものだ。
 ビビはいい聞き手だった。他の者だとつまみ食いしたり、ちゃちゃを入れたり、ほら話になったりで、収拾がつかなくなる。その点ビビは素直に話を聞いていた。

 ビビの話にカルーが「クエー、クエー」と相づちをうつ。
チョッパーがカルーの言ってることを通訳しようとすると、ビビはカルーの方を向いてカルーを撫でる。

 そうよね

 そう言ってるようにチョッパーには見えた。
 ビビとカルーは全然話している言葉が違うのに、お互いの言ってることが分かってるようだった。
 その様子を見ているとチョッパーは『ちくっ』と心がいたくなる。それがなぜだかわからないけれど。
 チョッパーは医学全般をドクトリーヌから学んだ。いろんな病気を知っている。それを治せる自信がある。だけど、この胸の『ちくっ』の原因は分からない。それは本には載ってなかったことだから。
 ビビとカルーと一緒にいたらそのわけがわかるかもしれないとチョッパーは考える。けどそんなことはすぐに忘れてしまう。このあたたかく優しい場所は居心地がいい。



 そのうちにゾロがカルーを枕にするために、3人の元にやって来て昼寝をする。
「ZZZ・・・」

 次にウソップがやってきて、ほら話を始める。3人は新しい話し手を歓迎し、ウソップの話を聞く。大きな大きな冒険話に心を弾ます。
「それでだな・・・」

 時々、船首にいるルフィがやって来て仲間に加わり、またにぎやかになる。
「シシシ」

 蜜柑の手入れにやってきたナミもそこに混じる。
「楽しそうね」

 ちょうど喉が渇いたころに飲み物をトレーにのせたサンジがキッチンからやってくる。
「ナミさーん、ビビちゅうわ〜ん、愛のドリンクです。仕方がねぇからヤロウどものもな」



いつの間にかみんながやってくる。

みんなのいるところ。

それが船の中心だ。


03/01/21 ★ CULT BITTER / キル