僕の恋人は青い猫




「ほれ、クソ馴鹿。おめぇの分のスペシャル・ドリンクだ」
 読書に夢中になっているチョッパーに、サンジがめずらしく出前のサービスにやって来た。
「ありがと・・・・おお!どうしたんだ?サンジ、ケンカか?」
 チョッパーが本から目を離し振り返ると・・・・・サンジの顔に目立つひっかき傷があった。驚いたチョッパーだったが、素早く救急箱を取ってきた。
「手当するぞ」
「・・・すまねぇな」
 ばつが悪そうにサンジはしゃがみ込んだ。

「しかし・・・サンジがやられるとはめずらしいな」
 サンジに消毒をしながらチョッパーが聞いた。いつもつまみ食いでぶっ飛ばされるだけに、一蹴りで決まらず頬を引っかかれるとは不思議に思った。
「ん。ちょっと、子猫ちゃんにやられてな」
「猫?この船に猫なんかいるのか?」
「まぁ、俺だけの子猫ちゃんだからな〜♪」
 デレデレと溶けてしまいそうな様子のサンジだ。
 しかし、チョッパーは、
「だからこの船にはネズミがいないのか」
 いや真相はネズミの食う分も船長が食ってるが正解ではないかと・・・。

「かわいいのか?」
「もう、むちゃくちゃかわいいんだぞ〜。もうぎゅって、ぎゅって!」
 上機嫌な様子で、力一杯ガバッと抱き寄せるようにサンジは自分自身を抱きしめる。そんなサンジを見てチョッパーも興味を抱いた。

「そっか。今度オレにも抱かせろ!」

 すると・・・

 さっきまでの陽気な世界がぶっ飛び、一気に名もない国に戻ったように急激に温度が下がった。チョッパーの毛皮がいきなり寒さのために冬毛に早変わりするほどだ。青っ鼻がいっそう青くなる。

 そしてこの世のものとは思えない声がサンジから返ってきた。

「どあほう・・・
俺だけの子猫ちゃん、ゆうたやろうが・・・・・」

 いきなり関西弁?
 ・・・ていうかこわいんですけど。

「・・・お、おぅ」

 少しチビりそうになったのはキミとチョッパーだけの秘密だぞ!

 さっきの一瞬、あの殺気はなんだったんだろう・・・どんどん怖くなってきてチョッパーは考えるのやめた。海賊は皆大変コワイ一面を持ってる・・・チョッパー心の日記帳に書き込まれた。
 そしてサンジはまた親バカ自慢のように『子猫ちゃん』のかわいさを褒め称え、一人でメロメロになっていった。
そんなサンジにチョッパーは一抹の不安がよぎる。

「ちゃんと躾けてるのか?」
「今はお勉強中ってとこだな」
 うんうん、と一人納得している。
「それでもひっかいたなら、サンジが嫌がることでもしたんじゃないか?」
「嫌がることなんか絶対、してないぞ。喜ばすことしかしたことないぜ」
「でも・・・サンジが喜ばしてるつもりでも、猫はそう思ってないかもしれないぞ」
 動物の味方だ、トニートニー・チョッパー。自分もぬいぐるみ扱いだからね。
「そんなことないぞ。喜んでくれてるさ」
「ちゃんと撫でたりしてるのか?」
「そりゃもう!いい声でちゃんと鳴いてくれるぞv」
「やっぱり泣かしてる!そんなんだから、ひっかかれるんだぞ!」
 チョッパーが甲板を蹄でベシベシ叩き、サンジに抗議する。
「でも絶対、気持ちいいハズなんだって!俺だけが気持ちよくさせられるんだって!!」
 今度はサンジが甲板をベシベシ叩き力説するが、チョッパーの目は冷たい。
 サンジの手から逃げたいのに、逃げられない小猫が脳裏に浮かぶ。
 手当を終え救急箱をなおしながら思わず溜息が出る。それでもサンジにアドバイスを続けるのは・・・・・サンジの猫がどんどんかわいそうになってきたから。

「なあ、その猫をかわいがるより、海鳥をかかわいがったり、みかんを大事にしたりしたらどうだ?そしたらひっかれないぞ」
 そう言われ一瞬考えたようだったが、すぐさま頭を大きく振りニィと笑った。

「いんや、ダメダメ。
俺の恋人は青い小猫ちゃん、ただ一人だから!」


■黒猫のタンゴ、タンゴ♪
自慢する傷というなら飼ってる動物にやられちゃった〜んの親バカ自慢キズよね(笑)。 話がかみ合ってそうで、かみ合ってない感じに。猫を抱くでいいのよねん。うんうん、私もそりゃもう無理矢理抱いてましたよ(爆)。

02/12/02 ★ CULT BITTER / キル