たぶん、オーライ
今日はあんまりにも天気が良かったから、『王女』の衣装を脱いで、ただの『ビビ』としてこっそり宮殿を抜け出した。 久しぶりにミス・ウエンズデーの服に手を通す。それだけのことなのにウキウキする自分がいる。 「行くわよ、カルー」 カルーに小さく声をかける。 「クエー!」 カルーは分かってるのか分かってないのか大きな返事を返す。仕方ないなバレちゃうじゃない、と思いながらも笑いが止まらない。 カルーの背に乗って海へ向かう。あの、みんなと別れた場所まで。 時々、すべてが夢じゃないかと思う時がある。 まだ私はバロックワークスにいて、都合のいい夢を見ているんじゃないかって。 彼等が現れてひょいっと手を貸してくれるのを、待ってるような気がする。 あの時と今と、どちらが現実か悩むほどに落ち着いた平和を受け止められない時がある。 ねぇ、私は本当にアルバスタにいるの? この国は救われたの? 本当に? 頭の中がグルグルしだしたらイガラムのところに行く。そしてぎゅっと抱きつく。これは私の現実を知る方法。 イガラムは生きている。 イガラムは生きている。 イガラムは生きている! 初めはイガラムも周りも困ったようだったけど、泣きそうな私に何も言わないでくれる。 そして、イガラムにいつもの問いかけをする。 「ねぇ、私は本当にアルバスタにいるの?」 「ええ、そうですよ」 「この国は救われたの?」 「救われました」 「本当に?」 「ええ」 「・・・よかった」 分かってるけど不安で、確かめずにはいられない。他に確かめる手を思い付かない。 この国は救われた。平和になった。大丈夫なんだ。 久しぶりに見る海にホッとする。砂漠の国の王女が海を見てホッとする なんて。やっぱり笑っちゃう。 「やっほー!」 山じゃないって、と心の中で自分でツッこむ。でも黙ってることもじっとしてることもできない。それぐらい、私の中にパワーが溢れてる。 「クエー!」 カルーも同じように海に向かって声をかける。 「私もがんばってますー!」 アルバスタは少しずつ立ち直ってきている。 「クエー!」 「だから、大丈夫ですー!」 「クエー!」 大丈夫だから。 まだ別れて少ししか経ってないのに・・・ さみしいよ。 あいたいよ。 あの時言ったことは本当。この国を愛してる。 でも、心の奥底でもうひとりの私がつぶやく。 「ついていきたかったんでしょう」 行きたかった。 大好きな人達と別れたくなかった。 海賊になってもいいとも思ってしまったほど・・・。 でも残ったのは私の意志。 「だいじょうぶ・・・よね」 「クエ」 カルーが心配そうにこっちを見ている。 「コレは秘密よ」 そういってカルーを抱きしめる。 私とカルーと、こっそり私達をつけてきたペルだけの秘密よ。 海を見ると涙もろくなってしまったわ。 彼等は海賊。でもこの国を守ってくれた。 そしてアルバスタにはない、夢を求めて彼等は新しい冒険に出てしまった。 でもひとつだけ、大事なモノを盗まれてしまった。 私の
03/07/02 ★ CULT BITTER / キル
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